「最近、なんだか雨が多いな…」
「『穀雨（こくう）』って言葉、聞いたことあるけど、一体どんな意味なんだろう？」
「この時期、特に美味しい食べ物って何があるの？」
春の終わり、初夏へと向かうこの季節。
変わりやすい天気に少し戸惑いながらも、日ごとに濃くなる緑に生命の力を感じますよね。
そんな時期を表す「穀雨」という言葉。その美しい響きとは裏腹に、意味や過ごし方まではよく知らないという方も多いはず。
でも、もうご安心ください。この記事を読めば、穀雨が「百穀を潤す恵みの雨」の季節である理由から、この時期にこそ味わうべき旬の食べ物のすべて、さらにはその恵みを最大限に楽しむためのヒントまで、深く理解することができます。
この記事を読み終えたあなたは、ただ穀雨に詳しくなるだけではありません。
雨の日さえも愛おしく感じ、旬の食材を通じて季節の移ろいを五感で味わう、そんな豊かな暮らしの第一歩を踏み出しているはずです。
穀雨とは？春の最後の節気が持つ意味と過ごし方
「穀雨」―この美しい響きの言葉が、私たちの暮らしや自然界にとっていかに大切な季節かご存知でしょうか。
春の暖かさが安定し、すべての命が次のステージへと向かう準備をする、まさに春のフィナーレを飾る節気です。
まずは、穀雨という季節の成り立ちや意味、そしてこの時期を心地よく過ごすためのヒントをご紹介します。
穀雨を知ることで、何気なく見ていた風景や、肌で感じる空気に、新しい発見があるかもしれませんよ。
「百穀を潤す雨」 穀雨の言葉の由来と意味
穀雨とは、その名の通り「百穀（ひゃっこく）を潤す雨」という意味を持つ、二十四節気の6番目の節気です。
百穀とは、稲や麦、粟（あわ）など、人間が栽培するあらゆる穀物のこと。
この時期に降る、しっとりとした優しい春の雨が、芽吹いたばかりの穀物の苗を健やかに育て、豊かな実りをもたらす「恵みの雨」となることから、この名が付きました。
冬の寒さが完全に去り、代わって暖かく湿った空気が流れ込むことで、雨の日が多くなります。
この雨は、田畑を潤し、植物の成長を促すだけでなく、空気中の塵や埃を洗い流し、若葉の緑をより一層鮮やかにしてくれます。
穀雨は、まさに大地とそこに生きるすべての命にとって、なくてはならない大切な季節なのです。
２０２６年の穀雨はいつ？八十八夜との関係は？
穀雨は、太陽の黄経が30度に達した日とされ、暦の上では毎年４月２０日頃から、夏の始まりである「立夏（りっか）」の前日までの約１５日間を指します。
２０２６年の穀雨は４月２０日から始まります。
春の節気としては、春分、清明に続く最後の節気となり、この穀雨が終わると、暦の上ではいよいよ夏が始まります。
また、この時期によく聞くのが「八十八夜（はちじゅうはちや）」。
これは、立春から数えて88日目の日のことで、毎年5月2日頃にあたります。
ちょうど穀雨の期間中に訪れることが多いですね。
「夏も近づく八十八夜♪」の歌でも知られるように、茶摘みの最盛期であり、この日に摘んだお茶は、不老長寿の縁起物として珍重されてきました。
ちなみに、次の節気である「立夏」については、こちらの記事でご紹介しています。
移り気な天候に注意！穀雨の時期の過ごし方のヒント
穀雨の時期は、「春の長雨」や「菜種梅雨（なたねづゆ）」と呼ばれるように、雨が降り続くことがあります。
また、日中は暖かくても朝晩は冷え込んだり、急に気温が下がったりと、寒暖差が激しいのも特徴です。
このような気候の変化は、自律神経の乱れを招きやすく、「なんだか体がだるい」「気分がすっきりしない」といった不調を感じることも。
この時期を快適に過ごすコツは、体を冷やさないことです。
薄手のカーディガンやストールを持ち歩く、温かい飲み物を飲む、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなどを意識してみましょう。
また、雨で気分が落ち込みがちな日は、室内で好きな音楽を聴いたり、読書をしたりと、ゆったりと心穏やかに過ごす時間を作るのもおすすめです。
穀雨の時期に楽しむべき旬の食べ物【春の恵み編】
穀雨の恵みの雨を受けて、ぐんぐんと成長し、一年で最も美味しくなるのが春野菜たちです。
みずみずしさ、柔らかな食感、そして口いっぱいに広がる甘みや香り。
この時期の野菜は、まさに春の大地からの贈り物です。
ここでは、穀雨の時期にぜひ味わっていただきたい、旬の野菜の魅力に迫ります。
スーパーの野菜売り場に並ぶ顔ぶれを見るのが、きっともっと楽しくなりますよ。
この時期だけの贅沢！「たけのこ」の食べ方と魅力
春の味覚の王様といえば、やはり「たけのこ」。
穀雨の頃に最盛期を迎え、柔らかく、えぐみが少なく、風味豊かなものが市場に出回ります。
食物繊維が豊富で、体内の余分な塩分を排出してくれるカリウムも含まれており、春の体を目覚めさせてくれる食材です。
掘りたてを味わえるなら、お刺身や丸焼きが最高のごちそう。
定番の若竹煮や土佐煮、シャキシャキの食感が楽しい炊き込みご飯やチンジャオロースなど、和洋中どんな料理にも活躍する万能選手です。
甘くて柔らか「春キャベツ」や「新玉ねぎ」
春先から出回る春キャベツや新玉ねぎも、この時期に甘みがピークを迎えます。
葉が柔らかく、巻きがふんわりとした春キャベツは、生でサラダにするのが一番。
コールスローはもちろん、ちぎって塩昆布とごま油で和えるだけでも立派な一品になります。
水分が多くて辛みが少ない新玉ねぎは、スライスしてサラダやマリネに。
また、丸ごとスープやオーブン焼きにすると、とろりとした驚きの甘さを楽しめます。
香り高い「アスパラガス」や「そら豆」
初夏の訪れを感じさせてくれるのが、アスパラガスやそら豆です。
アスパラガスは、疲労回復に役立つアスパラギン酸が豊富。
シンプルなグリルやベーコン巻き、天ぷらなどで、その独特の甘みと香りを楽しみましょう。
さやから出して塩ゆでするだけで、ほっくりとした食感と濃厚な豆の味が楽しめるそら豆は、ビールのお供にも最高ですね。ポタージュスープにするのもおすすめです。
穀雨の時期に味わいたい旬の食べ物【海の幸・飲み物編】
穀雨の恵みは、大地だけでなく海にも及びます。
そして、この時期ならではの飲み物も忘れてはなりません。
旬を迎える海の幸と、一年のうちで最も香り高いとされる新茶。これらは、春の最後の季節を締めくくるのにふさわしい、特別なごちそうです。
ここでは、穀雨の時期にぜひ味わいたい、海の幸と特別な飲み物をご紹介します。
食卓から、近づいてくる初夏の気配を感じてみてください。
旨みが凝縮！旬を迎える「カツオ」と「シラス」
黒潮に乗って北上してくる「初ガツオ」が旬を迎えるのがこの時期です。
脂が少なくさっぱりとしていて、赤身の旨みが強いのが特徴。
ネギやミョウガ、ショウガなどの薬味をたっぷり乗せた「たたき」でいただくのが定番ですね。
また、イワシの稚魚である「シラス」も春が旬。釜揚げシラスを熱々のご飯に乗せて、醤油をたらすだけで至福の味わいです。
カルシウムも豊富なので、骨を丈夫に保ちたい方にも嬉しい食材です。
穀雨に摘む「新茶（一番茶）」の特別な美味しさ
穀雨の頃から八十八夜にかけて、日本では茶摘みのシーズンが始まります。
この時期に摘まれる、その年最初の新芽で作ったお茶が「新茶」または「一番茶」です。
冬の間に蓄えた栄養分が凝縮されており、苦みや渋みの成分（カテキン）が少なく、旨みと甘みの成分（テアニン）が豊富に含まれているのが特徴です。
爽やかで若々しい香りは、新茶でしか味わえません。
この時期だけの特別な一杯を、ぜひ丁寧に淹れて、心ゆくまで味わってみてください。
中国の風習？穀雨に楽しむ「穀雨茶」とは
お茶の文化が根付く中国では、「穀雨茶（こくうちゃ）」といって、穀雨の日に摘んだお茶を飲む風習があります。
伝説では、この日のお茶には病を治す力があるとされ、人々はこぞって穀雨茶を求めたそうです。
また、「明前茶（めいぜんちゃ）」と呼ばれる清明節の前に摘まれるお茶と並んで、非常に価値の高いお茶とされています。
日本の新茶と同様に、春の生命力をいただくという思想が根底にあるのですね。
旬の恵みを食卓へ！穀雨の時期にぴったりの簡単レシピ
穀雨の時期の食材は、素材そのものが持つ力が強いので、複雑な調理は不要です。
シンプルに、手軽に、旬の味を最大限に引き出してあげるのが一番のごちそう。
ここでは、誰でも簡単に作れる、穀雨の恵みを満喫できるレシピを3つご紹介します。
春の終わりの食卓を、旬の香りで彩ってみませんか？
春の香り満載！たけのことワカメの若竹煮
たけのことワカメ、春を代表する山と海の幸が出会う、上品な味わいの煮物です。
- 材料： ゆでたたけのこ、乾燥ワカメ（または塩蔵ワカメ）、だし汁、薄口醤油、みりん、木の芽
- 作り方： 鍋にだし汁と調味料を入れて火にかけ、食べやすく切ったたけのこを煮ます。味が染みてきたら、水で戻したワカメを加え、さっと煮れば完成。器に盛り付け、香りづけに木の芽を叩いて添えます。
旬を味わう！初ガツオのたたき薬味たっぷり
さっぱりとした初ガツオは、たっぷりの薬味と一緒にいただくのが最高です。
- 材料： カツオのたたき（柵）、玉ねぎ、ミョウガ、大葉、小ねぎ、ニンニク、ショウガ、ポン酢
- 作り方： カツオのたたきを厚めに切って皿に並べます。薄切りにして水にさらした玉ねぎと、千切りにしたミョウガ、大葉、小ねぎ、すりおろしたニンニクとショウガを、これでもかというくらいたっぷり乗せ、ポン酢をかけていただきます。
豆の甘みが引き立つ！そら豆のシンプル塩ゆで
そら豆本来の味を一番楽しめる、究極にシンプルな食べ方です。
- 材料： そら豆（さや付き）、塩
- 作り方： そら豆をさやから取り出し、黒い筋の部分に少し切り込みを入れます。沸騰したお湯に塩を多めに入れ、そら豆を2〜3分茹でます。ザルにあげて、お好みでさらに塩を振れば完成。茹でたての熱々をどうぞ。
まとめ
今回は、春の最後の節気である「穀雨」について、その意味や旬の食べ物を詳しくご紹介しました。
- 穀雨とは： 二十四節気の一つで「百穀を潤す恵みの雨」が降る季節。春の終わりを告げ、豊かな実りの準備をする大切な時期です。
- 旬の野菜： 恵みの雨を受けて育った「たけのこ」「春キャベツ」「アスパラガス」「そら豆」などが最も美味しい時期を迎えます。
- 旬の海の幸・飲み物： さっぱりとした旨みの「初ガツオ」や「シラス」、そして一年で最も香り高い「新茶」も穀雨の時期の楽しみです。
- 過ごし方のヒント： 寒暖差が激しい時期なので、体を冷やさない工夫を。旬の食べ物で、体の中から季節の変化に対応しましょう。
これまで雨の日を少し憂鬱に感じていた方も、その一滴が穀物を育て、若葉を輝かせていると思えば、少し違った景色に見えてくるのではないでしょうか。
さあ、この週末は、丁寧に淹れた一杯の新茶を片手に、旬の食材を使った料理を味わってみませんか？きっと、心も体も春の潤いで満たされるはずですよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
